「どこに住もうか」に地図で答える ― 移住促進に地理空間データを活かす自治体の新戦略

「子どもが小学校に上がる前に移住したい。でも、学校まで何分かかるのか、近くに病院はあるのか、そもそも災害リスクはどうなのか……パンフレットを見てもよくわからなかった」

移住相談の窓口には、こうした声が絶えません。田舎暮らしやリモートワーク移住への関心はコロナ禍以降も高い水準が続いていますが、いざ具体的な検討に入ると「生活のリアル」が見えずに踏み出せないケースが多いのが実情です。
国土交通省の調査でも、移住を検討しながら実現できていない理由として「生活環境・利便性の情報が不足している」が上位に挙がっています。移住希望者が本当に知りたい情報と、自治体が発信している情報の間には、まだ大きなギャップがあるのです。

パンフレットでは伝わらない「生活のリアル」

多くの自治体の移住促進ページには、豊かな自然の写真、補助金制度の一覧、移住者のインタビュー記事が並んでいます。これらは「その地域に興味を持ってもらう」ためには大切な情報ですが、具体的な居住地を選ぶ段階で必要とされるのは別の要素です。

「候補の物件から最寄りの小学校まで何分か」「近くにスーパーはあるか」「ハザードマップ上の浸水リスクはどうか」「公共交通はどのくらい使えるか」――。
こうしたシビアな問いに正確に答えられるのは、テキストや写真ではなく「地図」です。移住希望者が自分の条件と重ね合わせて確認できる地図があれば、問い合わせの質も量も劇的に変わります。

「住みやすさ」はオープンデータで可視化できる

生活利便性を構成する多くの情報は、すでにオープンデータとして整備されています。

学校・保育所・病院・図書館といった公共施設の位置情報は、国土数値情報(国土交通省)でダウンロードできます。バス停や鉄道駅などの交通インフラも同様です。また、ハザードマップの浸水想定区域や土砂災害警戒区域は、国土交通省のハザードマップポータルからGISデータとして取得可能です。

これらを地図上に重ね合わせることで、「この地区は小学校まで徒歩10分圏内で、浸水リスクが低く、バス路線も通っている」といった情報を視覚的に伝えることができます。
さらに、自治体が運営する「空き家バンク」の物件情報をこの地図上にプロットすれば効果は絶大です。移住希望者が自分でレイヤーを切り替えながら、物件と周辺の利便性・安全性を同時に確認できるインタラクティブな地図は、「子育て世帯向け」「テレワーク移住者向け」など、ライフスタイルに合わせた協力なアピール材料になります。

「どのエリアに来てほしいか」を自治体側も地図で整理できる

移住促進における地図活用は、対外的な情報発信だけにとどまりません。
自治体側にとっても、「どのエリアへの移住を優先的に促したいか」を整理するうえで地図は非常に有効です。

空き家情報、上下水道などのインフラ整備状況、人口動態データをkintoneなどの台帳システムと連携させ地図で重ねることで、「受け入れ余地があり、かつインフラが整っているエリア」を庁内で共有しながら施策を議論できます。移住促進の補助金や空き家バンクの対象エリアを絞り込む際にも、データに基づいた明確な根拠が生まれます。

また、移住担当部署だけでなく、建設課・農政課・教育委員会といった関係部署が「同じ地図」を見ながら連携できることも大きなメリットです。「この地区に移住者が増えればスクールバスの路線見直しが必要になる」「あのエリアは農地の集約化と移住促進を同時に進められる」といった横断的な議論が、地図を共通言語にすることで生まれやすくなります。

移住後の「定着」もデータで支える

移住促進の効果は、新規の移住者数だけで測れるものではありません。せっかく移住してきた人が数年で離れてしまっては、地域の持続にはつながりません。移住後の定着率を上げるうえでも、地図データは役立ちます。

移住者がどのエリアに集まっているか、どの地区で転出が多いかを地図上で継続的に把握することで、「このエリアは生活インフラの整備が追いついていない」「コミュニティへの参加機会が少ない地区がある」といった課題を早期に発見できます。移住促進担当と地域振興担当が同じデータをもとに連携できれば、「呼び込む」だけでなく「根付かせる」施策へとつなげることができます。

「来てもらう」から「選んでもらう」時代へ

人口減少が進む中、移住促進の競争は自治体間でも激しさを増しています。補助金の額や自然環境の魅力だけで差別化することには限界があります。
これからは、「生活のリアルを地図で正直に、そして分かりやすく伝えられる自治体」が、情報収集に慣れた移住希望者から信頼を得て選ばれる時代です。

Geoloniaでは、オープンデータを活用した生活利便性マップの構築や、空き家バンク情報との連携、庁内のバラバラな台帳を地図上で一つにまとめるデータ共有環境の構築など、移住促進に向けた地図ソリューションの支援を行っています。「移住者向けの情報発信を地図でリニューアルしたい」「受け入れエリアをデータで整理したい」とお考えの担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

※kintoneはサイボウズ株式会社の登録商標です。