観光DXの“その次”へ。スポットデータを「作って終わり」にしない更新運用の回し方

観光パンフレットをPDFのまま配るのではなく、データ化して地図に載せ、Webで検索できるようにする。ここまで進めば、観光DXは大きな一歩を踏み出したと言えます。

しかし、公開して数カ月もすると、現場では次のような「あるある」が起き始めます。

  • 営業時間が変わったのに、古いままになっている
  • 既に閉店したお店が掲載され続けている
  • 季節限定の情報が更新されず、クレームにつながる
  • 多言語対応が追いつかず、結局日本語ページしか見られていない

観光データは「作る」ことよりも「更新し続ける」ことのほうがはるかに難しいのです。今回は、観光DXの次のステップである「更新運用で回る資産づくり」についてご紹介します。

なぜ更新が止まるのか?原因は「努力不足」ではなく「仕組み不足」

情報が古くなるのは担当者の怠慢ではなく、構造的な問題によって止まってしまうのです。

  • 誰が直すかが曖昧:観光課、DMO、指定管理、委託先など責任の所在が不明確
  • タイミングが合わない:イベントが終わってから気づくなど、後手に回ってしまう
  • 情報が集まらない:現場の事業者が変更を知らせるための導線がない
  • 直すのが面倒:入力システムが複雑だったり、承認フローが重すぎたりする

この状況を打開するには、データを整備する前に「更新され続けるための運用設計」を先に決める必要があります。

まず「正本(ソース・オブ・トゥルース/ Source of Truth)」を1つ決める

運用がうまく行っている自治体は、最初に情報の「正本(オリジナル)」を決めています。Excel、CMS、委託先の管理画面など情報が散らばると、同期が取れずに破綻します。ルールはシンプルです。

  • 正本は1つだけ:更新情報は必ずそこに集約する
  • そこから配信する:Web、地図、アプリ、オープンデータなどは、全て正本を参照する
  • 責任を明確に:データに「更新日」「更新者」「根拠URL」を持たせる

「スポットID」と「最小項目」で運用を軽くする

正本が決まったら、次はデータの持ち方です。ここで重要なのは「作り込みすぎない」こと。最低限あると運用が回る項目例としては、

  • スポットID:途中で変えない固有のID(採番)
  • 基本情報:名称、住所(緯度経度)、カテゴリ、公式URL、電話番号
  • 営業情報:営業時間、定休日、季節営業の有無
  • 公開状態:公開/非公開/休業/閉店
  • 最終確認日:「この日までは正しい」という品質の保証ライン

ポイントとしては、閉店したからといってデータを削除して処理しないことです。削除すると履歴が消え、リンク切れや再登録の混乱(IDの重複等)が起きます。「閉店」や「休業」というステータスで管理し、必要に応じて非公開にする運用がトラブルを防ぐコツです

更新フローは「入口は軽く、反映は確実」に

更新のハードルが高いと情報は集まりません。おすすめは二段構えのフローです。

  1. 変更連絡フォーム(入り口):事業者や住民が「どのスポット」の「何が変わったか」を「根拠(URL等)」と共に投稿できる、シンプルなフォームを用意します
  2. 編集・承認(反映):自治体やDMOが内容を確認し、正本に反映します

反映後、「情報を更新しました」と通知を返すことで、協力者との信頼関係ができ、継続的に情報が集まるようになります。

更新の「タイミング」をイベント化する

「いつ点検するか」を決めておけば、更新漏れは防げます。

  • 月1回:営業時間や定休日の棚卸し
  • 季節前:夏休みや紅葉、積雪期などの前に、季節情報だけを重点点検
  • 年1回:最終確認日が古いデータをリストアップし、閉店や移転を一斉確認

多言語は「翻訳できる形」にしておく

翻訳コストが爆発するのは、長文を都度翻訳しているからです。施設説明は「見どころ」「料金」「アクセス」などの短い要素に分け、固有名詞は辞書化して表記ゆれを防ぎます。また、翻訳システムと連携しやすいよう「最終翻訳日」を管理し、原文が更新されたら翻訳が必要だと分かる仕組みにしておきましょう。

地図ならではの表現:「レイヤー」と「面(ポリゴン)」を活用する

ここが地理空間情報を扱う上での最重要ポイントです。全ての情報を1つの「点(ポイント)」に詰め込もうとすると、地図は使いにくくなります。

“季節”と“イベント”は別レイヤーで持つ

「ひまわり畑(季節情報)」や「花火大会(イベント)」をスポット情報の中に書き込むと、シーズン終了後に古い情報が残る原因になります。そこで、スポット(場所)とイベント(期間)を別レイヤーとして管理し、IDで紐付けます。これだけで「終わったイベントが掲載され続ける」問題は激減します。

イベントやエリアは「点」ではなく「面(ポリゴン)」で捉える

例えば「桜まつり」の場所を、公園の管理事務所の「点」だけで表現していませんか?観光客が本当に知りたいのは「桜が咲いているエリア全体」や「お祭りの開催範囲」です。
GIS(地理情報システム)では、特定のポイントだけでなく「ポリゴン(面)」でエリアを登録できます。

  • 歩行者天国の範囲
  • Wi-Fiが使えるエリア
  • 混雑しているゾーン

これらを「面」で管理することで、地図上の表現力が格段に上がり、「このエリアに入ったらプッシュ通知を送る(ジオフェンス)」といった高度なデジタル施策にもつなげやすくなります。

観光データは「更新が回って初めてDX」と言える

観光DXの本丸は、単に地図に載せることではありません。閉店、季節、多言語といった「変わり続ける情報」を仕組みで回し、住民や旅行者に常に最新の体験を届け続けることこそがゴールです。

Geoloniaが提供する地理空間データ連携の仕組みは、スポットデータを正本として整備し、様々なメディアへ一貫して配信する基盤として設計しています。

まずは、お手元のスポット一覧に「スポットID」「公開状態」「最終確認日」の3列を足すところから、運用の見直しを始めてみませんか?