「避難所はどこ?」の次に聞かれることに、デジタルで答える方法ーー開設・混雑情報のデータ化
災害対応の現場で、住民から多く寄せられる問い合わせは「避難所はどこですか?」で、その次にはこういった質問が続きます。
「今、開いていますか?」「もう満員ですか?」「ペットと一緒に入れますか?」
ところが現場の実情はどうでしょうか。避難所一覧はExcelで管理され、開設状況は電話や無線で本部に集まり、ホワイトボードに書き出される。WebサイトやSNSの更新はまた別の担当者が行う……。
このように情報が分散すると、“最新情報が追いつかない”状態になり、住民の避難行動が遅れたり、特定の避難所に人が殺到したりする事態を招きます。
この記事では、避難所マップを単なる「場所の案内図」で終わらせず、災害時に開設・混雑状況をリアルタイムに伝える“生きたデータ”にするためのポイントを解説します。
「地図に載せた」だけでは起きる3つの問題
静的な(場所を示しただけの)地図しか用意していない場合、災害時には以下の3つの問題が発生します。
1.情報が古い(開設・閉鎖がわからない):夜間や休日など、担当者が不在のタイミングで災害が起きると、Webサイト上の「避難所一覧」が更新されず、開設されていない避難所に住民が向かってしまうリスクがあります。
2.住民の行動が偏る(特定の避難所への集中):地図に「場所」しか載っていないと、住民は自宅から一番近い場所を選びます。その結果、一部の避難所だけがパンクし、少し離れた別の避難所はガラガラというミスマッチが起きます。3.庁内が疲弊する(問い合わせの殺到):Webで状況が分からなければ、住民は電話をかけます。災害対策本部の電話が鳴り止まず、本来の指揮命令業務に支障が出ます。
ステップ1:「静的データ」と「動的データ」に分ける
解決の第一歩は、データを整理することです。デジタル庁が進める防災DXの取組や、自治体標準オープンデータセットの考え方も踏まえ、管理すべき項目を「平時に整備するもの(静的)」と「災害時に更新するもの(動的)」に明確に分けます。
1.静的データ(平時に整備・更新)
住所や設備など、発災直後に変わらない情報です。
- ID・名称・住所・位置情報(緯度経度)
- 種別:ここで重要なのが「指定緊急避難場所(一旦身を守る)」と「指定避難所(一定期間生活する)」の区別をデータ上で明確にしておくことです。ここが曖昧だと、グラウンド(避難場所)に夜通し過ごすつもりで住民が来てしまう等の混乱が生じます。
- 収容目安・設備情報:バリアフリー対応、ペット受入可否、駐車場の有無など
2.動的データ(災害時に更新)
ここが運用の肝になります。項目は欲張らず、「住民の行動判断に必要な最小限」に絞るのがコツです。
- 開設状況:未開設・開設中・閉鎖(撤収)
- 混雑状況:空きあり・やや混雑・満員(受入停止)※○○人という正確な数値よりも、信号機のように3段階程度でステータスを表示する方が、現場の更新負担が軽く、住民にも直感的に伝わります。
- 特記事項:停電中・毛布不足などの短文メモ
ステップ2:更新フローを「一本化」する(理想と現実)
データ項目が決まったら、次は「どう更新するか」です。災害時の現場は混乱しやすく、複雑なシステムは使われません。
- 理想のフロー:現地の避難所運営スタッフが、スマホや専用フォームからポチッとステータスを変更する。これがリアルタイム性の観点では理想です。
- 現実的なバックアップ:高齢のスタッフが多い場合や、通信状況が悪い場合もあります。その場合は無理にデジタルにこだわらず、「電話で本部に報告」でも構いません。重要なのは、電話を受けた本部職員が、ホワイトボードや紙のメモに残すのではなく「マスターデータ(管理画面)」を直接更新することです。
入り口が「スマホ」でも「電話」でも、最終的なデータの更新先(情報源)を1つに集約する。これさえ徹底できていれば、地図もリストも常に最新の状態を保てます。
地図は「分散の装置」になる
こうして「混雑状況」がデータ化され、地図上で「赤(満員)」「青(空きあり)」と可視化されると、地図の役割が変わります。
住民は地図を見て「近くの小学校は『満員』だから、少し先のコミュニティセンター(『空きあり』)へ行こう」と、自律的に判断できるようになります。つまり、地図が行政からの「お知らせツール」ではなく、住民の避難行動を分散させ、安全な場所へ誘導する「装置」として機能し始めるのです。
まずは「場所の整理」から
いきなり高度なシステムを入れる必要はありません。まずは手持ちのExcelリストを見直し、「静的データ」と「動的データ」を分けてみる。そして、「場所(逃げる)」と「所(住む)」の区別がデータ上ついているか確認する。そこからがスタートです。
Geoloniaでは、こうした避難所データの標準化支援や、災害時に誰でも直感的に更新・閲覧できる地図システムの構築を支援しています。「うちのデータでも大丈夫?」といったご相談も、お気軽にお寄せください。
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