静岡県焼津市様
市民参加型のスマートシティ実現に向けた地理空間データ連携基盤の活用
期間
令和6年度導入 *令和5年度補正デジタル田園都市国家構想交付金 デジタル実装タイプ(TYPE2)活用
導入内容
- 地理空間データ連携基盤
- 地理空間データ連携基盤と連携したアプリケーション:公開型GIS「スマートマップ焼津」
背景
静岡県焼津市は、市民の暮らしをより良くするため、「地理空間データ連携基盤」を使った 、「スマートシティYAIZU」の実現を進めています。この取り組みは、市のDX推進課が中心となっており、市役所内部はもちろん、官民が公開可能な地図データを一つにまとめる役割を担っています。
導入前の課題
焼津市は、市民の生活の質を向上させるため、2021年に策定したDX推進計画に基づき、スマートシティの推進を掲げました。その一環として、2022年度にデジタル田園都市国家構想交付金(デジ田)を活用し、FIWAREを利用したデータ連携基盤でデータを収集して、デジタル地図サービス「焼津データマップ」を開始しました。しかし、この最初のチャレンジでは、以下のような課題が発生しました。
- UI(操作画面)の動きが重く、快適な表示ができなかった。
- データの更新、追加に多額のコストがかかっていた。
- 地図の共有(パーマリンク)ができないため、情報共有がスムーズに行えなかった。
これらの課題を解決するため、2023年度には市民や職員から意見を聴取し、改善策を検討しました。そして、2024年度、2度目のデジ田で地理空間データ連携基盤を活用した「スマートマップ焼津」を実装することになりました。
解決策
Geoloniaの「地理空間データ連携基盤」を導入し、複数のデータソースを地図上に統合した公開型GIS「スマートマップ焼津」を開発しました。このサービスによって、以下の点が実現しました。
- 動作の高速化と簡単なデータ管理:従来数秒かかっていたデータ表示が、地理空間データ連携基盤の高速化の仕組みによって劇的に改善されました。職員は、GitHubにデータをアップロードするだけで、簡単に地図を更新・管理できるようになり、専門的な知識がない職員でも手軽に最新の情報を反映させることが可能になりました。
- 既存システムとの連携:地理空間データ連携基盤のAPI/SDKの仕組みを活用し、データ連携基盤など、他のサービスとの連携が可能になりました。災害時には、データ連携基盤を経由して、市の雨量計や水位計、避難所の開設状況といったリアルタイム情報を、様々な地図に重ねて高速表示できるほか、市民が浸水状況などの写真を投稿し、位置情報と共に地図上で共有できる仕組みも実装しています。
- 様々な地図共有の仕組み:「スマートマップ焼津」は、単に地図を表示するだけでなく、情報を「共有」し「活用」してもらうことを前提に設計されています。これにより、市民や職員が地図を活かして、より良いまちづくりに参加できる仕組みができました。
- リンクの共有: 地図の特定の場所や表示されているデータを、簡単にURLリンクとして共有できます。このリンクを送るだけで、相手はすぐに同じ地図画面を確認でき、情報伝達がスムーズになります。
- API/SDKによるデータ共有: アプリケーション開発者向けには、地図のAPIや開発キット(SDK)を提供しています。これにより、スマートマップ焼津のデータを活用して、新しいサービスを自由に開発・公開できます。
- GitHubによるデータの共有: 焼津市のオープンデータはGitHubで公開されており、誰でもデータをダウンロードして利用できます。データの更新も簡単になり、官民が連携して新しい価値を創出する基盤となっています。

焼津オープンデータカタログ (https://github.com/yaizu-city/opendata)
GitHubへのアップロードで、スマートマップ焼津へのデータの追加・更新・削除などが可能。また、エンジニアや教育・研究機関等が自由にデータを活用して、防災や観光など、市民生活に役立つ新しいアプリやサービスを次々と生み出すことができます。

スマートマップ焼津で様々な情報を重ねても固まらない。分野を超えた情報を重ねて見ることができます。

民間の災害投稿サービスと連携。現在、市役所職員や焼津市消防団が投稿を実施していますが、将来的には協力者を拡大する予定です。
導入のポイント
「スマートマップ焼津」は、単に情報を表示するだけでなく、市民の安全を守るための実用的なツールとして活用されています。
- 動作の軽快さ:膨大な量のデータを表示しても、動作が重くなることがなく、快適な操作性を実現しました。
- オープンデータ活用: 国土地理院のベクトルタイルなど、既存のオープンデータを活用することで、コストを抑えながら高機能な地図サービスを構築しました。
- 官民連携の促進: スマートシティ推進協議会に参加する多様な組織が、各自のデータを持ち寄り、地図上で可視化しながら施策を企画・検討できるようになりました。
主な成果
- Web地図を通じた情報発信により、市民からの問合せ負荷が軽減
- 職員の更新作業はGoogle スプレッドシートで完結。機動的なデータ更新が可能に
- 市民の防災意識向上だけでなく、「暮らしやすさ」への貢献も実感
今後の発展
今後は、地理空間データ連携基盤をベースに、自治体現場の業務を効率化させる業務アプリケーションや、新しい市民サービスを構築し、本格的なスマートシティを推進していきます。データ連携基盤(FIWARE)と地理空間データ連携基盤という2つの基盤を活用し、サービスやアプリケーションを使ったユースケースをさらに広げていく計画です。
ご参考
- 焼津市 広報やいづ 2025年3月1日号 掲載
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